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「おまえ、」
「今はおまえを助けてやる。許嫁には嫌われたくないからな。不本意だが」
昨日は俺を殺そうとしたが、雛の手前できない。
脇を抱えて廃工場を出ると、
「遼太郎!!」
車を降りた奏が血相変えて走ってくるのが見えた。
約束の時間より遅いと思った俺を迎えにきたのか。
「俺ができるのはここまでだ」
銀は駆け付けた奏に押し付けるとそのまま背中を向けた。
「……銀さん、」
「銀でいい。今日のとこは貸しだ」
冷たいだけの男がと思ったら雛には甘いようで、俺を突き放すと去って行った。
くっ、
脇腹の痛みが限界を超え、雛が脇を支えるも崩れ落ちた。
「遼太郎!」
「いやっ、しっかりして!」
声が遠くなる。
目の前が暗くなって体から力が抜けてく。
「遼太郎!!しっかりしろ!」
奏の叫びにもう目が開かない。
そのまま暗闇へと落ちていった―――
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