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手に温かい雫が落ちた。
しゃくりあげる声が聞こえ、薬品の匂いがする。
目を開けると成田の背中と雛がそばにいて泣いているのがぼんやりと見えた。
ポロポロと雫がつかまれた手に落ちる。
「……雛?」
答えがなく背中を向けた成田が振り返って額に頭突きを食らわせた。
「まったく、どこまで世話を掛けやがる。傷口が開いちまったじゃねえか」
「……悪い」
「族を抜けたってな、その娘と奏に聞いたぞ」
「…ああ、ケジメをつけてきた。こんなになっちまったけどな」
雛が泣いている。
ただただ震えてるのを見ると胸が痛くてたまらない。
「雛」
「……死んじゃうかと、思って…怖かっ、た…」
「悪りい、もう無茶しねえ」
走ってきた雛の姿が記憶に焼き付いてる。
本当に必死だった。
その背中を引き寄せて抱き締めた。
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