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「先月、雛の祖父が亡くなっている。両親はすでに他界していて、兄弟もいない」
「………」
「たったひとりだけ身内と呼べるいとこをみつけた。祖父と同じく狼の研究をしている大学教授だ」
ふたりだけで奏と話をした。
あの男は雛のいとこだった。
「祖父が亡くなり葬儀を終えた数日後に雛は行方不明になっている」
事故か事件に巻き込まれ記憶を失ったんだろうと奏が言った。
「雛を帰すか、帰さないか、それはおまえの判断に委ねる」
そう言うと奏は立ち上がった。
「自分に嘘は吐くなよ」
ただ一言。
忠告と言える言葉をすれ違い様に置いていった―――
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