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「驚いたか?俺も驚いた。治療の途中でどんどん傷が治ってくんだ。骨が折れて皮膚を突き破った足も元通りになった。一晩で完璧なほどに戻ったんだ」
成田の言ってることがわからない。
一晩で折れた骨が元通りに、傷口が縫うこともなくなくなっていくなんてそんなの人間じゃない。
腕や胸だって折れていただろう。
生きてるのさえ不思議なくらいの傷だった。
目の前にいる女は―――何者?
「ただ厄介なことに記憶を失ってるようで、自分がどこの誰か、家も両親のこともわからない」
「―――は?」
「つまりな、おまえが引き取るしかないってことだ。脇腹の傷が塞がったらおまえが責任持って連れて帰れ」
「そんなことできるわけ」
「遼太郎。だったら警察につき出すか?その辺に投げるか?できるか、おまえに」
成田はわかってるんだ。
脇腹を刺されたのだって族がらみだ。
警察は敵以外のなにものでもないってことを。
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