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「…遼太郎?…名前」
小首を傾げる。よくわかってないようだ。
「それはおまえが知ることじゃない、おまえの名前は―――」
記憶があってもなくてもいい。
名乗りたくないだけだろうからな。
ただ名前がないのは不便かもしれない。
周りを見回すと成田には似合わないカルガモの親子のぬいぐるみがあった。
「…そうだな…雛。雛って呼んどくか。名前くらいあった方がいいだろ」
安易につけたら、
「可愛い名前」って素直に喜んでた。
本気で気が抜けてバフッと枕に体を預ける。
「雛、おまえ人間じゃないよな?」
「…人間じゃないの?わたし」
そこから話が噛み合わない。
言いたくないなら逃げて行けばいいのに逃げもしない。
こいつ、本当に記憶がない?
青みがかった目は明らかに人間ではない。
戸惑うように顔を上げるガキにもう何もいうことはなかった。
こいつ、本当に何も知らない―――?
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