百物語に相応しいかどうか

3/3
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
病院に案内した後、一旦家に帰ろうとする私に彼女がついてきましてね。 宿がないから泊めろと言うんですよ。 そりゃ長男の家ですから泊めないわけにいきません。 どうぞどうぞと家に入れ、座敷を片付けていると、 腹が減った、お茶漬けしたいと言うのですよ。 それで、漬けた梅を思い出しましてね。 丁度浸かった頃だろうから、出しますねというとおばさんがポロリとこぼすんです。 「そういやあんた知ってるかい?死人の出る年につけた梅は腐るんだよ」 おやそうなんですかと受け答えしながら瓶を出して蓋を開けた途端。 恥ずかしい話ですが、その場で泣き崩れました。 「見なかったことにしようね」 後の始末はおばさんが全てやってくれましたわ。 その次の週末、おばあちゃんは鬼籍に入りました。 それから何年かは梅干しは作らず、再開したのは結婚してからですかね。 今では孫の焼酎には欠かせないものとなりました。 え?その後はもうないのかって? 二度とあるわけがない。 なんたって家の梅干しは4キロに対して焼酎一本使いきり。普通は呼び水に少しですが消毒消毒。 それに加えて、普通の梅干しの2割増しの塩を入れてます。 腐るどころか黴も生やしませんよ。 その代わり。 家族全員高血圧症で、脳血管危ないですけれどね。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!