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日下尚美は、幸せの絶頂にいた。
二歳年上の夫は、働き者で優しく、夫婦生活は満足いく物だった。
そして、待望の子宝にも恵まれた。
そんなある日の出来事だった。
ご近所のスーパーで買い物を終え、帰宅すると、やっと一安心。
身重では、歩くのにも気を使う。
お茶でも飲もうかと用意していると、
突然、何の前触れもなく襲われた。
後ろから肩を掴まれ、引き倒される。
「キャア~!」
「助けて~!」
彼女の金切り声にも、犯人は躊躇(ちゅうちょ)しなかった。
黒い影が、悪魔のように尚美を見下ろしている。
尚美は、恐怖に震えた。自分の身にこれから起こる事を予想できたからだ。
黒い影は、バットを振り上げた。
悪魔は、顔さえも黒く、表情が分からなかった。
だが、尚美には、奴が何処を狙っているのかが解った。
「やめて~!」
必死の叫びも虚しく、凶器は振り降ろされた。
どぉん
どぉん
どぉん
鈍い音を立てて、機械的に振り降ろされるバット。
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