2.武史との出逢い、そして

1/2
前へ
/10ページ
次へ

2.武史との出逢い、そして

 私は1年の時、鉄道研究会に居た。  やる事もなく歩いていたら勧誘されてなんとなく、だ。  後で会長に聞いてみると、眼鏡をかけた地味な外見が同好の士に見えたらしい。  鉄道など全く興味が無かったが、それならばと、部員、先輩たちは色々と優しく教えてくれて、気がつけば姫ポジションにいて、それも悪くないかなと思い始めていた。  ところが2年になった時、サークル勧誘会で武史を見かけた。  まだあどけなさが残る顔に澄んだ瞳、すっかり一目惚れした私は、即座に鉄研に勧誘したけど、けれども彼は、高校の頃から小説を書いていたらしく、文芸サークルに入ってしまった。  私は彼を追いかけたい一心で、何の迷いもなく同じサークルに転籍した。  創作は初めてで、周りは手慣れている人たちばかり。しかも女性も多い。  武史くんは執筆経験もあるのかとても上手。私は追いつこうと必死で勉強して、2か月後にはそれなりのものは書けるようになっていた。  そんな私は、告白のチャンスをうかがっていた。  ところが2か月前……、相談があると突然言われて、ドキドキしながら行ってみると、美菜子のことが好きだけどどうしたらいい? と言われてしまった。  ショックだった。美菜子と私では月とスッポン。こちらが仕掛けたところで勝算は見えている。  ならばどうしようか……、熟考した結果、せめて好きな人が喜ぶ顔が見たいと、何度か武史が美菜子に告白出来るようにお膳立てしてあげた。  ところが、肝心な所でイジイジしてしまう彼は、全くチャンスを生かすことが出来なかった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加