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ここまで言ったところで美菜子は突然、私をベンチに強引に座らせた。
遠目で見ていた武史もさすがに心配になったのか、二人に近づこうとする。しかしそれを美菜子は制止した。
「前々から思ってたんだけど、夏乃、ちゃんとメイクしたこと無いでしょ。ほとんどすっぴんじゃない」
「……」
「男ってなんだかんだで外見に弱いのよ。私がメイクしてあげる」
そう言ったかと思うと、美菜子はカバンからメイクセットを取り出して、私にメイクをはじめた。汗を拭いてファンデーションをたたいて、目元、口元と手際よく決めていく。
「とりあえずこんな感じかな。ちょっと鏡を見てごらん」
そこに映っているのは……
「え!?」
そこにいたのは、二重まぶたも奇麗に決まって、まるで別人のように見える。口元も自然なピンク色。目元もキレイ。まさかメイクだけでここまで変わるなんて……。
「ポイントだけでもかなり変わるものでしょ、さて、武史くんのところに行くよ」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
美菜子に手を引かれ、私は武史のところへと戻った。
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