第2章[…妹へ。]

2/6
前へ
/32ページ
次へ
それから…数か月後の4月。 私は何事もなかったかのように、志望校だった高校に無事合格し入学式を終えていた。 健人は…。 「はあ、おはよう…先、顔洗ってくるか?」 「…いい、もう済ませたから。」 私の入学した高校の傍に家を借り、健人と一緒に暮らしていた。 「おい、健人…気を遣え、毎朝同じこと聞いてじろじろ見るんじゃない。」 「健人パパ…お茶飲む?私いれてくるね。」 「ありがとう。」 ママと健人パパは、再婚することにしてこうして一緒に暮らしていた。 私も健人も…兄妹となった。 「勤務先、変えなかったのか?」 「え?ああ…別に問題はないだろ?」 「…悪いな。」 健人は私に黙って、私の入学した高校に教員として勤務することにしていた。 私を驚かせようと決めていたらしい…でも、互いの親が再婚となって彼自身から入学式前に話してくれた。 「…アイの行く高校に赴任する事にしたんだ、親父たち籍入れないらしいからみよじはそのままだけど、兄妹だということは学校には言ってあるから心配する事ないから。」 何の心配だろうか? 「…うん。」 「あ、それと…。」 「わかってる…学校では他人で先生って、ちゃんと呼ぶから。」 「ああ。」 「…健人?」 「…。」 ママが健人パパと一緒にいるべきだということは、私も健人も理解していた。 あの事故でママは聴覚を失ってずっと錯乱していたけど、健人のパパのおかげで自分自身を取り戻していった。 聴覚も事故の影響ではなく、精神的なものだとわかり取り戻しつつあった。 「ママ。」 私は母の肩を軽くたたき、笑顔を見せる。 「いってらっしゃい。」 「行ってきます。」 ママの記憶は時々、混乱しているのか…パパを探していることがある。 そのたびに健人パパが、支えていた。 私や…健人は?
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加