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それから…数か月後の4月。
私は何事もなかったかのように、志望校だった高校に無事合格し入学式を終えていた。
健人は…。
「はあ、おはよう…先、顔洗ってくるか?」
「…いい、もう済ませたから。」
私の入学した高校の傍に家を借り、健人と一緒に暮らしていた。
「おい、健人…気を遣え、毎朝同じこと聞いてじろじろ見るんじゃない。」
「健人パパ…お茶飲む?私いれてくるね。」
「ありがとう。」
ママと健人パパは、再婚することにしてこうして一緒に暮らしていた。
私も健人も…兄妹となった。
「勤務先、変えなかったのか?」
「え?ああ…別に問題はないだろ?」
「…悪いな。」
健人は私に黙って、私の入学した高校に教員として勤務することにしていた。
私を驚かせようと決めていたらしい…でも、互いの親が再婚となって彼自身から入学式前に話してくれた。
「…アイの行く高校に赴任する事にしたんだ、親父たち籍入れないらしいからみよじはそのままだけど、兄妹だということは学校には言ってあるから心配する事ないから。」
何の心配だろうか?
「…うん。」
「あ、それと…。」
「わかってる…学校では他人で先生って、ちゃんと呼ぶから。」
「ああ。」
「…健人?」
「…。」
ママが健人パパと一緒にいるべきだということは、私も健人も理解していた。
あの事故でママは聴覚を失ってずっと錯乱していたけど、健人のパパのおかげで自分自身を取り戻していった。
聴覚も事故の影響ではなく、精神的なものだとわかり取り戻しつつあった。
「ママ。」
私は母の肩を軽くたたき、笑顔を見せる。
「いってらっしゃい。」
「行ってきます。」
ママの記憶は時々、混乱しているのか…パパを探していることがある。
そのたびに健人パパが、支えていた。
私や…健人は?
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