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「はあ…アイ?どこか怪我したか?」
人だかりがある中で、健人は私を助け出し…私を名前で呼び、周囲を驚かせた。
「ううん。」
萩原先生までもが、健人を見て驚いていた。
「そうか、はあ…ふう。まだ、座ってろ…。」
「うん…。」
私を座らせたまま、健人はゆっくりと立ち上がり黙って私たちを見ていた萩原先生の胸ぐらをつかむなり周囲が止めることもできないまま殴り倒していた。
「萩原立て…。」
「ちょ、けん…廣瀬先生!私なら大丈夫ですから!」
私は慌てて、立ち上がり健人の手をつかんだがすぐに放された。
「アイ?こいつをかばうのか?」
「…廣瀬先生?」
「はあ、先生なんて呼ぶな…お前はまだ座ってろ。」
健人は駆け付けた原田を見つけるなり、私の傍にいるように目配せをして私は原田に肩を抑えられ座らされた。
「萩原、お前。アイにどういうつもりだ?お前が抱き着かなければ、アイが怖い思いしなくてすんだんだぞ!」
口から出た血を座り込んだまま萩原先生は、ぬぐって健人を見上げていた。
「どういうつもり?それは俺が廣瀬先生に聞きたい。」
「はあ?」
健人はまた、萩原先生の胸ぐらをつかんで立たせていた。
「柏木から笑顔奪ったのは、あんただろ?」
「…はあ?」
「はあ?じゃね…偉そうに!」
「偉そうにしてるのはどっちだ?俺の女を抱きしめておいて…。」
「俺の女?フッ…。」
萩原先生は、座らされていた私に優しく微笑んでくれた。
「お前な、その自分の女に守らせるようなことするな。」
「はあ?」
萩原先生は、何もかも知っているんだと確信した。
健人は誰も止めに入れないほど、殴る勢いのままだった。
「俺なら…そんなことはさせない。」
萩原先生も健人の胸ぐらをつかんでいた。
健人が殴られ、床に両手をついて口を切ったのか血が吐き出されていた。
「きゃ…け、廣瀬先生?」
「はあ、柏木…どいてろ。」
健人に駆け寄った私の手に触れようとした萩原先生の手を、健人は払うと私を抱きしめた。
「アイ…俺はもう抑えることはできない。」
「え?」
「アイ、愛してる…。」
「…な、」
私は周囲の人だかりを見渡していたけど、健人は私だけを見ていた。
「もう、放して…。」
「俺よりあいつがいいのか?」
「…廣瀬先生!」
私は健人の目を見て、そういったけど…彼は何か吹っ切れたのか、まったく動揺していなかった。
「アイ…。」
「はい!どう?どうでした?俺らの寸劇!」
萩原先生が急にそんなことを言い出した。
「は?え?す…寸劇?」
驚いて聞き返していたのは、私の担任だった。
「な?廣瀬先生。」
「え?」
萩原先生は必死に、健人の横にいる私を見て健人をにらみつけていた。
「ええ。そうです…。」
健人は慌てて、そう即答していた。
「劇なのに殴ったのか?」
「…えっと、ですね。それは…。」
萩原先生が困っていると、健人が…。
「生徒は巻き込まないと言っていたのに、巻き込んで…危うく転落事故になるところだったものですから。」
「…そうですか?柏木は関係ないということですね?」
「はい。」
萩原先生ははっきりと言い切ると、さっきまでの事が…作り話になった。
誰かは小声で、「絶対劇とか嘘だ…。」なんて言ってる人もいたけど…。
「ひとまず、お二人は柏木と保健室で手当てしてもらってください。」
担任はそういうと、集まっていた生徒たちに教室に戻るように言って教室にはいった。
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