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健人は優しく私に微笑んでくれると、肩の力を抜いて腕をまくり上げていた。
「アイ。俺…ちゃんと、教師していく。その方がいいんだよな?」
「え?」
「アイとの時間を過ごしたくて教師になったのは、事実だけど…わからないと悩んでいたアイに俺が教えて、わかったときのアイの笑顔が忘れられなくて。教えるって事でこんなにも人を笑顔にできるんだって思ったのもあって、教師になったんだ。」
「うん、知ってるよ…忘れてたでしょ?」
「ああ。」
そうか…。
そうだよね、
もう一回…言わなきゃ。
いっしょにいられないね。
って…。
私は、健人の目を見れなかった。
「健人、私…ね。」
「だけど、俺は変わらないから…変わらない。」
「え?」
「アイの事、わかってないとでも思ってたのか?ガキのくせに俺の心配して…。」
健人はそっと私の頭に手を置いた。
「健人…。」
「俺は、お前の心配するのをやめないし…この気持ちは変わらない。」
「私…。」
「何も言わなくていい…考えなくていい。俺が考えてやるから、これでも一応教員してますので。」
健人はニヤリと笑うと、掛け布団をかけなおしてくれた。
「もう少し寝るか?」
「…いてくれるの?」
「いてやりたいけど、帰りのホームルームにはでなきゃいけない。」
「行って…私も起きて自分の教室戻る。」
私は体を起こすと、ベッドから降りて背筋を伸ばした。
「アイ?」
「うん?」
私は振り返った時、健人にキスをされた。
「はあ?だ、誰かに見られたらどうするの?」
「…どうもしない、言ったろ変わらないって。」
健人とは逆に、私はどうしたらいいのかわからなくなる一方だった。
「私は…。」
「そうだな、アイはうん…今は、勉強に専念しろ。学校の家の近くでな。」
「うん?」
「…うん?じゃねえよ、あんなデカい家に一人で住まわされられるか。あの家は借家にして、貸す。いいな?」
「え!」
「…もう決めたから。」
「あ、」
何も言わずに保健室を出ようとした、健人の背中を見つめた。
「うん?なんだ?文句は言わせないぞ?」
「違う…あ、ありがとう。」
「フッ。ああ、じゃー悪いけど先教室行くな。」
健人の優しい笑顔に私の心が穏やかに、温かくなっていくのが分かった。
「あ!まっすぐ、廣瀬宅な!お前が勝手に移動させてた荷物は親父が取りに行ってくれてる。親父には言ってあるから。」
「健人パパ忙しいのに…。」
「お前の為だったら動くんだと…。」
「フフッ。」
「まったく…。」
「スミマセン、ご心配をかけまして。」
「…いいんだ、ほんと病院いいか?」
「はい。」
チャイムが鳴った。
「ああ…やばい。」
「フフッ、もう行って。」
私は健人を見送り、ベッドを整えて保健室を出た。
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