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「ううん…健人、健人お兄様。帰るの嫌だな…。」
「ばっ…バカ!なんて顔して言うんだよ!バカか。」
「もう、すぐ馬鹿って言うんだから。喧嘩、ママたちの喧嘩聞こえてたでしょ?
ママ声通るし…パパ酔ってたし。うん、今日は史上最悪な感じだったんだよね。」
「…ごめん。」
「え?なんで?健人が謝るの?」
「うちの親父だろ…ほんとごめん。」
「うちのパパにない優しさがあるから、うちのパパのただの嫉妬だよ
…うちこそ、ごめんなさい。健人のお母さん…気分悪いよね。」
「そんなことないよ、見習わなきゃって言ってた。」
「うちのママのどこを?外面過ごすき、知ってる?ああ…知らないか、
マジでウケるんだけど料理まるっきしできないし、掃除だって超下手くそだし、
洗濯もの一つだってフフッ。」
「フフッて?」
「一生乾かない干し方するから…ある意味家事の天才。
どうしたらこうもできないかって…。」
「え?それは…言い過ぎだろ。」
「いやいや…うちのママを過剰評価しすぎだって。」
「フッ…それを言うなら、うちのおやじだって。
お前よく爽やかだって言うけどジジだぞ。」
「フッ。」
互いに笑顔を見せていた時、
健人はブーブ―とうなりを上げる携帯を,ズボンのポケットから取り出していた。
「…電話だ、ちょっと外で出てくる。」
客席から離れ、外に出ていく彼を私はずっと見つめていた。
その電話が…。
私達の時の流れを変えた。
「アイ、行くぞ…片付けろ。」
「え?」
健人は戻るなり、私の腕をつかんでせかした。
「ちょっと、どこに行くの?」
「いいから、急げ。ああ…もう、いい。スミマセン…急用であれ
後日取りに伺いますので預かっていてください。えっと…これ。」
健人は大学生でありながらも、いつも持ち歩いていた名刺を渡していた。
「アイ、行くぞ。」
「え?あっ…スミマセン。」
支払いも済ませ、早々にファミレスを出るとすぐに道路わきに立ちタクシーを停めた。
「早く乗れ。俺も乗るから…。」
「え?あ、はい。」
タクシーの扉が閉まると…彼の口から病院の名前が告げられた。
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