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手を振って、自動ドアへと走って行く「おっちゃん」の後ろ姿に、俺は頭を下げた。
このバイトで、俺は少しだけ自分に自信を取り戻すことができた。
学校を辞めたことで自信を失っていた―と言うか、本当に何もする気がしなかった俺に、「やる気」を取り戻してくれた場所だった。
だから。
本当は、もう少しだけこの場所にいたかったけれど。
「どうします? これ。温かいうちに飲みますか?」
柳瀬君が、缶コーヒーを片手にそう聞いて来る。
「柳瀬君は、勤務前だからそうしなよ。俺は、終わってからゆっくりと飲むよ」
「じゃあ、内緒で温めておきますよ」
柳瀬君は、そう言って俺の缶コーヒーをホットドリンクのコーナーへと持って行って、後ろの列に置いてくれた。
もうすぐ、俺の勤務時間は終わる。
この店の店員としての日々は、今日の午前六時で終わる。けれど、まだ残っているから。
「いらっしゃいませ!」
俺は、新しく入って来た客に笑顔でそう言った。
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