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僕の住んでいる町は、とても田舎だ。
最寄り駅までは、自転車で1時間半かかり。その駅に電車が止まるのは、2時間に1本。それも、上りと下りで交互に。つまり、上り方面に行きたい時に電車を1本乗り過ごしてしまうと、次に乗れるのは4時間後なのだ。
そんな事駅から、さらに僻地へと進んだ場所が、僕の住んでいる町だ。
そんな田舎町で、唯一都会の香りを感じさせてくれるのが、『ニコニコマート』だ。みんなは、略してニコマーと呼んでいる。
そんなニコマーができたのは、僕が小学生6年の時。
小学生の近くにあった駄菓子屋のお婆さんが、何を思ってか一念発起して、コンビニを始めたのだ。
初めてニコマーへ入った時の衝撃は、今でも覚えている。
天井一面の蛍光灯が明るく照らす店内は、様々な商品が所狭しと置かれていて。生まれて初めてハンバーガーの実物を見たのも、この時だった。
そして僕は、この時もう一つ、初めての経験をした。
お小遣いを握りしめて、ハンバーガーを買おうとした僕に笑顔で「いらっしゃいませ」と言ってくれたアルバイトのお姉さんに、僕は一目ボレをしたのだった。
それからの僕の青春は、ニコマーと共にあった。
春には、別れと出会いをニコマーで買ったスナックやジュースで祝し。
夏の暑さは、店内の冷房とアイスで凌ぎ。
秋の夜長のお供も、ニコマーの商品で。
冬の寒さは、熱々のおでんと中華まんが温めてくれて。
そして、そんな毎日に。お姉さんの笑顔が、幸せを添えてくれていた。
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