ごくごく普通の男友達

3/5
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「大河、暇だ」  その言葉を合図に、大河はよほどのことがない限り、私の一人暮らしのアパートまでやってくる。  大河が来ると、ほのかに甘い香りが漂ってくる。  私は冷蔵庫にあるお茶をコップに入れて、それを大河に渡す。  そして、大河は「ありがと」とニコッと笑う。  ここまでがいつものテンプレ通りの流れだ。  一人暮らしのアパートに、女の子が男の子をあげるなんて事は、何か起こってしまっても、何も言えないことなんて分かってた。  それでも絶対的に、私と大河の間には、何も起こらないという確信が私にはあって。  実際、ほんのちょっと大河をからかってみたことがあったけれど、大河は照れるだけで、私に指一本触れなかった。 「茜、シンと連絡とってないの?」  突然の「シン」の事に、私は黙りこんだ。  シンは大河の親友だ。  大河とは違って、女の子が大好きな遊び人。 「最近はとってない」  出会った当初、私はシンとの方が仲が良かった。  だけど、シンの事は手に負えないと、いい感じになればなるほど思い知ったんだ。 「シンのこと、好きだったっしょ?」 「好きだったよ」 「まぁ、俺が女でもシンを好きになる」  シンは女心を掴むのが上手だった。  欲しい時に欲しい言葉をくれる。  寂しい時に気付くとそばに居てくれる。 「だけど私の手には負えないから」 「そう? 茜とお似合いだったけど」  そうだ、私とシンはいい感じだったはずだ。  それでも告白できなかったのは、シンは私のことを多少は思っていても、付き合いたくないというのが分かったからだ。  きっとシンは、彼女が欲しくないはずだ。  それが分かってしまって、そしたら同時に、周りにいる女の子は私だけではないのだと察しがついてしまった。 「だって・・・・・・シンは彼女欲しくないじゃんか」 「・・・・・・そうかもね。でも、彼女になるって大事なことなの?」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!