ごくごく普通の男友達

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 シンに関する話なんて、あまりしてこなかった私達。  彼女になる事が大事なのかと尋ねてきた大河に、私はほんのちょっと戸惑った。 「ねぇ、大河も彼女いらないの?」 「えっ、俺? まぁ、今は別に」 「大河も本当はさ、シンに似てる?」  シンのように、彼女を作らずに不特定多数の女の子と遊んでいたいのだろうか。  私の知らない大河が、本当はいるのだろうか。 「どういう意味? 質問が難しいよ」  そう言うと大河は笑った。  あぁ、そうなんだ。  私はきっと、シンと大河は違うと思っていたから、こんなにも信頼してたんだ。  この屈託のない笑顔を、本物だと信じたかったんだ。 「ねぇ、大河。大河も本当は遊び人?」 「いや、全然。そういう似てるかよ、似てねーよ、そのへんは」  「だけど俺は、シンみたいになりたい」と、大河は言った。 「大河は大河のいい所を残したままで居てよ。シンの悪い所は似なくていい」 「例えば?」 「なんていうか、シンは楽しいことが好きじゃない? きっと私は、大河の前で泣けても、シンの前では泣けない」  大河の前では言えない。  本当は、こんな風に語り合いたかったのは、シンとだったこと。  大河と居ると、安心は出来ても、何か一つ物足りないこと。  気の利いたセリフの一つでも、大河が言ってくれたら良かったのに。 「そういうもんかね」  どう反応していいのか分からなそうに、大河は小さく答えた。 「そういうもんだよ・・・・・・」 「それでもまだ、本当は好きなくせに」  私は何も答えなかった。  大河、このブレブレな私に、喝を入れてはくれないの?  諦めろでもいい、応援するでもいい、どちらでもいいから、背中を押すことはしてくれないの?  大河は好きだ。  でも、どうしていつもいつも、肝心な女心を分かってくれないのよ。
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