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「やはり貴様か、ブラック・ウィンド」
漆黒の人物が体勢を整える間に純白の騎士が追いつき、数歩離れた位置で予断なく身構えると妙に確信めいた口調で話しかける。
「漸く俺の牙が届くところまで追いつくことができた」
この騎士は、漆黒の人物に対して不用意に近づく事を良しとはしなかった。
この人物の力量を知っているのであろう、人間の身体能力を凌駕するといわれるアペデマクの身体能力をもってしても、油断をすれば状況が一変することをこの騎士は良く知っているかのようだった。
「城からずっと俺を追ってきていたのか?」
漆黒の男がゆっくりと、しかしまったく隙の無い動きで立ち上がる。この騎士から逃げ切ることは無理であると考えたのであろう、背中に隠すようにして携行していたシミターを取りだし、目の前にいる獅子の顔を持つ騎士を睨み付ける。
彼の眼前でシールドを構えたアペデマクの騎士からの返答は無い。
「ご苦労なことだ・・・。
他の連中は諦めたと言うのに・・・」
男は無言のままでいるアペデマクの騎士の態度を肯定と捕らえた。
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