第4章 不可視の花冠

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「お買い得ならともかく、お手頃なヤツなどどこの国にも騎士団にも不要だ」 「えっと。その、幸せって連鎖するらしいですから、どうです? 今夜俺と」 「残念だが、そこの竜と馭者がしばらく引きこもる分、仕事は増えるぞ。早朝会議で使う草案は出来ているのか?」 「うっ、今日中には。任された仕事はしっかりやりますから、ご褒美もくださいね」  先払いが欲しかったのか手を握ってくるラッセを振りほどかないハーレイが陥落するのは、そんなに先のことではないのかもしれない。  頭の上に咲いた可憐な花が風のない室内で揺れる。  白は無垢、白は希望、初恋。裏の意味は終焉。  思いの実体化としては健気すぎる花の宿主を見つめながら、パルは遠回しな巣篭もり宣言で竜を誘った。 「おいで、ルフェス。うちに帰ろう」
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