第4章 不可視の花冠

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 先に達した外のペニスが吐き出したものを指ですくって口元へ運ぶとざらざらした小さな種のようなものが舌に残った。とろりとした精子の味は喉に張り付くように甘い。  ペニスの見た目と合わせて果肉のようなそれが中にも注がれたのを感じて、パルは全身から力を抜いた。  鱗片が浮き出た背中を引き寄せると人に擬態した肌は火照って汗で濡れている。もう一度と声をかけてやりたいのに、緊張から解き放たれた身体は休息を求めている。  ルフェスの名を呼ぶだけで閉じてしまいそうになる瞼の隙間から彼を見る。 「パァル……」  優しく思いをこめて呼びかけられて、穏やかな波に揺られている気分だった。  怖くない、全部もらうと伝えたいのにはじめて拓かれた身体は若い恋人に付き合ってやれそうにない。  人の形が崩れてしまっても、竜の姿でしかいられなくなってもパルの心は変わらないだろう。  だって、もう戻れない。  彼と共にあることを心も体も望んでいる。  人としての倫理観や価値観を、いつか失ってしまっても。 ****** 「頭に花が咲いたようだというのはたとえであって、我が国の守護竜にふさわしい状態ではないな」  パルとルフェスの仲睦まじさを目で認識し、見守るような表情になる者と笑い始める者は半々くらいだった。ハーレイらしい辛辣な物言いには、パルとルフェスに向けての愛もある。     
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