第4章 不可視の花冠

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 初めての行為を花や種に例えて考えしまったのが悪かったのか、ルフェスの頭部には一輪の花が揺れていた。  害もないし、微笑ましいが、すれ違うたび皆の目がそこに向けられるのは仕方がない。  王宮内ならともかく、初夜の成功を民にまで知られることはないとハーレイはルフェスに自宅待機を言い渡した。  彼の属性である炎を連想させない白い花は、パルの腹に描いた純潔の象徴と同じ品種であるらしい。  夫人に見られたら吹聴されそうだとハーレイが慌てている隣で、ラッセは羨ましそうにこちらを見ていた。  こういうことについてルフェスが他人に情報を共有するとも思えないが、あのハーレイを懐柔しつつあるラッセの粘り強さは侮れない。  ここはひとつ釘を刺しておこうとルフェスの制服の袖を引っ張ったパルは、意識しすぎておかしくなっている彼が盛大に赤面するのにつられて恥ずかしくなった。 「今のお前達では使い物にならない。今のうちにゆっくり励んでくれ。竜と人の混血は超のつく美形に育つそうだから、俺はそいつに期待する」  本気かどうかわからないことを言うハーレイは、パルとルフェスの恋の成就を喜んでいるように見える。 「団長代理には俺がいますよね? 年下がいいなら、俺が絶対お手頃ですって」     
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