第1章 気位ばかり高くて偏食家で

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 飲まず、遊ばず、恋もせず。ただエンレイに認められたいという一心で突き進むパルの気持ちは恋愛感情なのではないかと指摘してくる連中もいた。  けれど、彼に対する思いは敬愛の域であり、性欲をともなうものではない。  主張を取り下げないパルの態度が気に入らなかったのか、酔わせて大人数で不埒なことを行おうとしてきた輩もいた。    退団になった彼らを憐れむつもりはないけれど、三十間近にもなって娼館にも通わず、異性にも同性にもまったく興味を示さないパルの方が異質なのかもしれない。  ならば、エンレイはどうなのか。  彼に対してはそういう勘ぐりをすることさえ恐れ多い。  自分で性欲を発散したことがないとは言わないが、パルの自慰は抱き合う対象を思い描かないもので、手を動かして吐き出すことだけが目的の淡泊なものだった。  そういう日々を過ごしてきたのに、馭者としてこんなことをしなければならなくなった出会いを今さら嘆いても仕方ないのだろう。  彼をおびき出す儀式の始まりは、脱衣から。  腰ひもを解き、前の合わせを広げ、肌色を見せつける。  自分のどこが良かったのか、彼の好みに一致したのかパルにはまるで理解出来ない。  若くもないし、強くもない。  地面の上で開いた足の間にある性器もその奥の秘所もおそらく一般的なものだろう。     
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