第1章 気位ばかり高くて偏食家で

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 ルフェスがどうしてこんな誘惑に弱いのか、パルにはわからないままだ。  まだ角度を変えてはいない雄芯に指を絡め、心を読んでしまう竜のために頭から雑多な思考を追い払う。  彼を愛しているわけではない。けれど、他の男のことを思い浮かべてしまったら、彼は躊躇せずその相手を黒焦げにするだろう。  名前だけは、見た目だけは、幸いなことに優れているルフェスを心に呼び寄せるのはそう難しいことでない。  そんなに執着してくれるなら、奪ってくれれば楽なのに、心が読めてしまう彼は未来の相思相愛を夢見ている。  ロマンチストの最凶竜。  同じ思いを返せてやれたら何もかも丸く収まるのに、恋心が芽生える兆しはなかった。    今、そんなことを考えるべきではない。  見せつけるように足を広げて、声をあげて。彼をここまで引っ張り出すのが馭者の役目。    サイドから編み上げて、後ろで束ねた髪が乱れていく。  艶の無い茶褐色の髪の人間はどこにでもいる。青い瞳だって珍しくない。  日に焼けたまま、手入れなんてしていなかった肌。薄く残った戦いの痕。  こんなものに欲情して、機嫌を直す竜は単純で趣味が悪くて、理解しがたい。    直向きな求愛者でもあるルフェスの名を呼びながら、パールフロラムは微量の精を何とか吐き出した。 
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