第1章 気位ばかり高くて偏食家で

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  硬度を失った性器から手を離して、指を汚すものを確認したパルは、実地で学ぶことになった竜の放精について考えてしまう。  異種なのだと思い知らされる形状のそれは、望まれるならすべて捧げるつもりだったパルを躊躇させ、視線を逸らすことしか出来なくした。  意匠を凝らした大剣の鞘のように見えたペニスは蜜のようなもので濡れていた。挿入に備える準備は万端だったけれど、触れているだけで逞しさに恐怖ばかりがふくらんでいく。   竜を優しく迎え、人と繋ぐのが『馭者』の役目。繰り返されなくてもわかっているはずなのに、震えは止まらずルフェスが達するような手技は満足に行えなかった。   パルがこういうこと全般に不慣れなのを彼は喜ぶ。無理をしなくていいと言ってくれるけれど、若い雄竜が何を望んでいるかパルにだって想像がつく。   鮮やかな焔をそのまま人の形にしたようなルフェスの見た目に、好意を抱かない相手はいないだろう。  華美で強引。直情型で嫉妬深い。  人々が思う炎竜そのままに生まれてきた彼は、パルから見ても魅力的な雄であった。  出会うタイミングが違っていれば、彼に一目惚れしてくれる可愛らしい人間と結ばれていたかもしれない。物語としてはその方が完璧なのに、色恋に縁のない同性を選ぶなんて竜の嗜好は変わっている。   拙い手技だけでは物足りないだろうと彼の股座に顔を近づけた。   内に埋め込まれるとなったら、裂傷覚悟のサイズなのに舐めると蜜はじわりと甘く舌を痺れさせていく。交尾に支障がないように雌の性器を麻痺させる成分が含まれているのかもしれなかった。  ペニスを口いっぱいに頬張ったことなど一度もなかったのに、隙間からよだれがたれるのも忘れるくらい夢中になる。喉奥まで迎え入れても全部は収まらない。吸って、舌を絡めて、手ではしてやれなかったことを一通り終えると急に肩を押されて、解放された。  間に合わず顔にかかった精液の量は、人ではありえないほど。蜜と違って、青臭い匂いは奉仕に必死になっていたパルの意識をはっきりとさせる。  自分は積極的過ぎただろうか。
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