第4章 不可視の花冠

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 それも無かったら、パルはあの部屋に入ることもしなかっただろう。  衣服を取り去ってしまえば、 背中と腕の変化にも気づく。爬虫類の特徴が強く出ている場所をそっと撫でてから、パルは彼が一番気にしている部分に指を絡めた。  充分な角度と弾力を持ったペニスには生殖機能も備わっているように見える。軽く包んだだけで、ぴくぴくと反応している性器の根元から先端まで刺激が強すぎないように加減して手を滑らせる。  枝分かれしたように別方向に伸びた二本のペニスは蛇の身体の構造とも違っていた。  手と口で同時に触れることは出来そうだが、両方同時に入れることは形状的に無理だろう。  繋がっていない片方も自分の腹か足を汚すのだと考えたら、急に下半身が重たくなって、パルは自分がどんな顔をしているかわかってしまった。  ルフェスに絡むことだとなぜか大胆になってしまうだけなのに、気持ちいいことばかり搾取する淫婦のように見えるだろう。  これが彼のものでなければおぞましいと忌避するはずなのに、竜と人との中間で安定していない彼を誘う言葉しか頭に浮かばない。  触れたい、触れて欲しいと思うトリガーは彼に関して発動する。  それならば自分はもうずっと前から彼の虜のようなものかもしれなかった。     
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