第4章 不可視の花冠

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 そうした後の行為だから、交歓の結びつきが強いのだという説に票を投じる気はないけれど、排泄器が作り替えられる感覚は確かに癖になりそうだった。  捏ねられて、きゅうと吸い付くごとに腰より下に熱が宿る。  期待と不安が半々で、意味のある会話など出来ないパルとは逆に饒舌になるルフェスの声は低くかすれていた。 「俺に人との交尾の手ほどきをしたのはエンレイだという噂があるとハーレイが教えてくれた。もし、それが本当ならパルには絶対知られるなと忠告までしてくれた」  その話がもし真実なら、こんな場面での話題にはしないだろう。  初夜の床で、他の人間の名を出すのはどうかと思うが、やましい気持ちがわずかにでもあるなら、きっと出来ない。  この際だから、疑いを晴らしておこうとしているのか、今夜のルフェスはよく喋る。 「あいつには色々なことを教えてもらった。人として生きる道も与えてくれたエンレイには感謝している。親代わりで、教師の役も務めてくれた恩人に筆下ろしまでしてもらうという発想が俺には理解出来ないが、お前の耳にいつか入って誤解されるのは面倒だ。わざわざ宣言することでもないし、経験不足を誇るのも馬鹿げているが、後にも先にもこれをするのはお前だけた」     
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