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「……彼女に用があったのは本当だ。あの館の蔵書は特定の分野に対して、王宮や学園の図書館より充実している。利用したいなら、サロンにも顔を出せと言われて、雑用係をやらされた。お前が心配するような関係ではない」
「……ルフェスがそれほど読書家だとは知らなかった」
「字を追うのは好きじゃない。だが、聞きたくもないことを教えてくれそうなエンレイより、本に頼った方がマシだ」
ルフェスの得たかった知識は、性行為に関する古今東西の資料を収集しているマルキアス公爵夫人所有のの書庫にあったのだろう。
「人型になっていても竜としての本質は削がれることはない。好きな子を見つけて大切に思うなら、勢いだけで押し倒すのはアウトだとエンレイから言われていた。友人に聞いた話として異種での交尾の労苦を説明してくれたが、間違いなくあれはあいつ自身の体験談だろうな。育ての親の濃厚な艶話を延々聞かされる気持ちがわかるか? あいつに心を捧げた奴らに俺は心から同情する」
美しさを見慣れたからではなく、中身をよく知っているから、ルフェスはエンレイを恋愛対象にしないのだろう。
貞操観念がしっかりした純愛思考の竜がどのように育まれたのか、よくわかる。
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