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そこまでを回想して、ヨシヒコはまたコーヒーを口に含みながらヒーローインタビューを受ける自分を眺めた。
「ということは、荒木さんは、独自の計算によりこの隕石がルートを変えると予測したんですね?」
「はい。それが、この場所、時刻は昨夜0時の予測でした。」
「しかし、咄嗟のこととはいえ、よくあのような策に出ましたね。」
「はは、少し強引過ぎたかなぁと思ったんですが、隕石が落ちると言っても誰も信じてくれなかったので...」
「ヨシヒコすごぉい!やっぱりヨシヒコは一番かっこいいね!」
美奈子が隣で笑っている。
美奈子はコンビニに隕石が落ちたことを知るや否や慌ててヨシヒコの無事を確認するために電話を掛けてくれた。
『ごめんね...私どうかしてた。』
その一言で、美奈子は無事にヨシヒコの元に戻ってきた。
『もう一度恋人の美奈子とヨリを戻したい!』
メモ帳に書き留めた願いは見事に叶った。
冷静になって考えれば、一生金に困らない生活。とかもっとこう欲にまみれたことも書けたはずだ。
しかし、ヨシヒコには必要無いみたいだ。
棚ぼたで得た「天才物理学生」という肩書きのオプション通り、急に天才へと変貌することが出来た。
彼は神様から貰った思いがけないプレゼントをこれから世のため、人のために使っていこうと考えた。
「どうしてそこまで必死になって荒木さんは、お客様を救おうとおもわれたのですか?」
テレビでは女性アナウンサーの締めの質問が流れている。
画面いっぱいに映っているヨシヒコ改め、天才物理学生 荒木ヨシヒコはまだ泥に汚れたままの顔を笑顔で溢れさせて答えた。
「お客様は神様ですから。」
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