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ジャキっと頭に何かヒンヤリとする感触のものを突きつけられた。
「動くな!」
「はいっ!!」
間違いない!...ピストルだ...、本物のピストルだぁ!!
動けば間違いなく死ぬ!
殺される!!
「今、何時だ?」
「じ...11時50分です!!」
「なんだと...?」
ガタガタと小刻みに震え始めた。
ヨシヒコが、ではなく、強盗がである。
「あと10分しかないじゃないかぁ!!!」
慌てふためく強盗は、地団駄を踏むようにその場でジタバタと足を踏み鳴らした。
(なんなんだよ!!)
最悪の1日だ!
昼間に恋人の美奈子に突然の別れを切り出され、傷心したままバイトにくれば変な客に絡まれ、挙句に強盗だと!ふざけるな!
なんて日だ!!
なんで俺がこんな目に遭わなきゃなんねぇんだよ!
でも死ぬのは嫌だ!死ぬのは...!それだけは...!
何とかして脱出する手立ては無いものかと、ヨシヒコがレジを開いた。
(ここはやはり金しかない!)
「ピロリローン♪ ピロリローン♪」
(なんてこった!このタイミングで!)
会社帰り風の女性が二人入店してきた。
女性たちはレジ前の怪しい男と、ヨシヒコが今置かれている状況に気づいていない。
「おい!」
強盗がボストンバッグを突き出した。
「えっ?かっ...金なら今すぐ!」
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