Rテレポーテーション・サービス

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「それにしても便利な時代になったものだ」  自宅で注ぎたてのコーヒーを口にする医者の香山は、この素晴らしき時代に感謝していた。それというのも、彼の部屋の片隅に置かれている直径二メートルほその大きさがあるガラスケースにあった。ガラスケースにはコードが幾つが繋がれており、それが隣接する装置に繋がっていた。隣接する装置も合わせると中々の大きさの装置で場所を取り、不便に思えるが実際のところ、そうではない。  今の時代、このガラスケースと装置は大小様々な大きさがあるものの、ほとんどの家庭に置かれていた。 「さて、今日は何を注文しようか」  香山は何か注文するモノはないかと、カタログと部屋の中を見回しながら考えた。別に何か足りないモノがあるという訳ではないが、この便利な装置を使いたかった。誰だって、初めてかった新しい道具は用がなくても使いたくなるものだ。香山もそんなありふれた大衆と同じであった。 「おや?ミルクが切れていたか」  コーヒーにミルクを入れようとミルクポットに目をやると、いつの間にかミルクが無くなっていた。丁度いい、タイミングだった。香山は手持ちのタブレットを開くと、いつも利用しているサイトに繋いだ。 『いらっしゃいませ。ようこそ、Rテレポーテーション・サービスへ』  聞き慣れた自動音声と一緒にサイトのトップページが表示される。香山は馴れた手つきでIDとパスワードを入力すると、自分が利用しているページを開き、注文を入れる。 「私の家にB会社製のコーヒー用ミルクをワンセット。支払いはカードで」 『かしこまりました。少々おまちください』  自動音声がそう告げるとほぼ同時に装置が動き出した。それから、十秒と経たない内にガラスケースが光り出した。初めて見た時は、驚いた香山であるが使い慣れてくると驚きより感動の方が強くなる。これを、見ていると自分もついにSFの世界に足を踏み入れたような気分になって。  数秒ほどガラスケースが光っていると、次第にその光りは弱くなりケースの中には香山が注文したコーヒー用ミルクがワンセット箱に入って置かれていた。
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