Rテレポーテーション・サービス

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「やはり素晴らしい」  香山はガラスケースからミルクを取り出すと、さっそく飲みかけのコーヒーに加えた。突然、現れたミルクを飲むなど、初めは妙な気分であったが馴れてしまえば、これ以上に便利なことはない。  いつも、自分が愛用しているB会社製のミルクだった。 「お前のような装置が出来た当初は半信半疑だったが、実際に使ってみると便利なものだ」  香山は装置に語りかけるように言った。部屋のペースはとるが、それだけの価値があった。この装置は、まさに新時代を代表する発明貧であった。  これは、物質を他の場所に転送するテレポーテーション装置。一昔前までは、夢物語でしかなかった発明。科学の進歩というのは、ついに、このような近未来的な装置までも実現させてしまった。  物質を一時的に分解し、電子に置き換えることで遠くの場所に再構築する。口でいうのは簡単であるが、それを実現させるとなると難しい。試行錯誤の末に完成したテレポーテーション装置は瞬く間に、世界中に普及し、今では人々の生活には欠かせなかった。  ただ、何でも転送出来るという訳でもない。装置の構造が非公開なだけに、その管理は徹底していた。それを、行っているのが香山が商品を発注したRテレポーテーション・サービスなのである。そこが、テレポーテーション装置の運営管理を一括して担当していた。カタログを見て注文すれば、すぐに手元に商品が届く。一方で人が怠けてしまうのではないかという偏狭的な意見を言う人もいた。注文してすぐに、届くのならばわざわざ、出掛ける必要もなくなり、人は家に閉じこもってしまう。  それでも、やはり、この装置の発明は素晴らしいという意見が多い。第一に物量が改善されこれまで多く運搬に使われてきた時間と労力が割かれ、燃料の消費も大きく減った。  それにより環境問題の幾つかはこれまでに比べて大きく軽減した。エネルギーの問題にしても同じだった。消費が減ったことは、それだけ数少ないエネルギー資源を他に回せるようになったのだから。人々の意見は、こちらの方を優先し怠ける問題は後回しにした。
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