Rテレポーテーション・サービス

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 ただし、いくら便利な装置といっても制約はある。例えば、生きた動植物を転送することは禁止されていた。安全に食品や物を転送できることは確認されていたが、生物に関しては実験を行っていない。万が一のことが起きたら、重大な責任問題に発展しかねない。それが、食品や物であったのならば、保証はいくらでもできるが、命に関しては責任をもてなかった。Rテレポーテーション・サービスでも何度か、サービスの向上は検討されたが、危険性の有無は無視できなかった。  ニュースでも時々、どこかの研究所で無許可で生物の転送実験を行おうとして摘発されたという話をよく聞く。そのような者を発見して捕まえるのも、Rテレポーテーション・サービスの仕事であった。全ては皆が利用する、テレポーテーション装置を快適に使うための努力であった。 「フフフフンフ」  香山は鼻歌交じりで機嫌良くコーヒーを飲んでいると、装置が急に音を出して動き出した。その音に香山は露骨に嫌な顔をした。 「またか・・・」  香山は苦々しい顔でガラスケースに転送されたモノをみた。ガラスケースの中には容量一杯に大小様々な段ボール箱が置かれていた。ガラスケースからそれらを運び出して、宛先を確認してみると、それらは妻宛になっていた。  これらを注文した彼の妻といえば、注文したウォーターベッドで今も気持ちよさそうに寝ていた。  香山は妻に一切断ることなく乱暴に段ボール箱を開ける。中身は全て、どこかのCMで見たことある健康食品や美容器具だった。予想はしていたが、彼はガックリと肩を落とした。  確かに世の中は便利になり、香山も満足ゆく生活を一応は送れていた。だが、彼でもこれだけは解決できなかった。妻の浪費癖だは。  以前は注文してから届くまで数日かかったので、妻は注文を面倒くさがり通信販売というのはあまりたがらなかった。それが、テレポーテーション装置を購入してから、ガタでも外れたかのように浪費家になってしまった。最短で数十秒、今回のように大量の荷物を送ってもらう場合でも寝る前に注文しておけば、朝まで全て届いている。
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