Rテレポーテーション・サービス

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 時間の短縮化も思いもよらない浪費家を生み出してしまった。  香山が何度、妻に使いすぎ注意しても、 「あなたは医者なんでしょう。月に数十万の商品を買ったぐらいでガタガタ言わないでよ」  買ったばかり高いマニキュアを指先に塗り、その光沢に目を細めて夫の話などまるで聞こうとしなかった。  いくら、香山が医者であるとはいえ、ブラックジャックではあるまいし何百万と稼げている訳ではない。給料だって、会社勤めのサラリーマンと大差ない。彼が月に稼ぐ金はほとんど、妻に吸収され役に立たない商品に変えられてしまう。  このままでは、いけないと香山は色々と思案していたが、具体的な方法は思いつかなかった。香山が医者であるが故に、知り合いの精神科医に相談することはできるが、妻は感がよく彼が自分に何かしようとしていると悟ると、実家に連絡を入れて事をオーバーに伝えてしまう。治療の為にはある程度の通院や入院は必要である。妻はそれを、よからぬことを誤解しているらしい。彼女にとって、金を使うことこそが生き甲斐のようになっていた。それを、自制させることは難しかった。  妻との離婚、テレポーテーション装置の解約など様々な手段を考えはした。それでも、ダメだ。妻のことは今でも愛していたし、装置にある生活になれてしまうと解約するのも惜しかった。  だが、ことは深刻だった。妻はカードを使い次から次と商品を買いあさる。先月なんかはとうとう、生活費を切り詰めても足りず香山は親類に借金をしたぐらいだった。まさか、妻が浪費家でなんとは言えず、親類に頭を下げて生活費を借りた。  そして、今月はその生活費を返さなくてはならないというのに、その額すら残りそうになかった。  愛憎は表裏一体。妻を愛している分だけ、香山の心には殺意が芽生えていた。殺意を幾度となく振り払おうともしたがダメだった。頭の中には妻を殺そうとする自分の姿があった。  色々な意味で限界だった。  しかし、妻を殺害すれば警察は間違いなく香山を疑うことだろう。妻の浪費癖に悩んでいたのは彼だけなのだから。  香山は幾度となく計画を練り、そしてついに計画を思いついた。下準備は万全だった。その間に、妻の浪費癖が治ることを期待していたが、やはり無理だった。
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