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私が固まっていると、男性スタッフがやってきて、なんでもないように髪のかたまりを掴むとゴミ袋に詰めてしまいました。呆然としていると「エクステだよ」とスタッフはおどけてみせました。立ち上がり見てみると、浴槽にはつけまつげも転がっています。スタッフの言う通りだと、私は胸を撫でおろしました。
ゴミ袋をエントランスへ下ろし、契約しているゴミ収集のお兄さんに渡します。
お兄さんがゴミ袋を受け取った時に眉を寄せました。
「あれ、この物件、人が死んだ?」
私は戸惑いながらも首を左右に振りました。
「いえ、管理会社からは夜逃げだと……」
「えー絶対、死んでるよ。俺、ゴミ屋だよ? 人が死んだにおいはわかるよ」
そう言ってお兄さんは笑いました。
私が携わった仕事に『遺品整理』はないはずです。
しかし、それも申告されなければわかりません。
あの髪のかたまりは、本当にエクステだったんでしょうか?
それとも、浴槽でエクステを切らなければならないことがあったのでしょうか?
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