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店員さんは、胡散臭いという表情を隠さなかった。
「あんた、ひょろっとしてるけど病気はないよね」
遠慮も容赦もない。
「一応健康です」
「スポーツはやってたの?」
「登山部でした」
僕の忍耐力が培われた理由は多分にこの部活にあるが、それは殆ど役に立ったことがない。
「……決めた。あんた明日からうちに来なさい」
「は?」
「は、じゃない。この店で雇うから。いやあ、よかったわ、うちの人は腰痛持ちだし働きたがらないのよ」
僕だってできたら働きたくはないが、そうはいっていられない。
「名前は?」
「秋山実です」
「じゃあ実君、私が店長の丸井シゲ子です。シゲ子さんって呼んでね」
何故に苗字ではなく名前呼びなのだろう。
それに、この欲しいものが全くない店に人を雇う余裕などあるのだろうか。
少しだけ考えたが、こんな機会はもうなさそうだ。
僕は、半ば無意識にハイと返事をしていた。
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