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僕は、半月経ってもまだ丸井商店にいた。
日々限界への挑戦だ。
急坂に石段は当たり前。
おととい、配達先のぼうぼうの雑草を掻き分けていると、庭の草刈りを命じられた。
「ほら、あんたも配達に来やすくなるじゃろ」
取ってつけたような理由だ。
「ちょっとチョッキンしてくれると助かるのう」
チョッキン爺さんは、庭木の剪定までも押しつけてきた。
僕は、らくらく高枝切り鋏スキルを習得した。
今日の配達は、多分楽勝。
荷物の重さはせいぜい二十キロだし、片道二十分だ。
石段の途中で、しゃがみ込んでいる老婆を見つけた。
とりあえず日陰に運んで、持っていた水を飲んでもらう。
体温も上がってはいないし、脈もしっかりゆっくり打っている。
大丈夫とは思ったが、このまま置いて行くわけにはいかない。
「お家はどちらですか」
老婆は遥か山の彼方を指差した。
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