またまた出没ずぶ濡れ男

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またまた出没ずぶ濡れ男

「店長、から揚げ棒が残り1本です」  牧人が店長の大東に向かって報告する。 「わかった。今日は追加しなくていいや」 「いいですか?」 「ああ。どうせこの大雨じゃ客もこないだろ」  一時間と少し前から降り出した大雨は止みそうにない。数分前から雷まで鳴り出した。風の強さも時間を追うごとに増してゆく。 「しかし、参りましたね」 「ああ。県内中に警報が出ているからな。定時になっても雨がやむまでこの店で雨宿りしていていいぞ」 「ありがとうございます」  牧人が大東に礼を言ったところで、自動ドアが開いた。 「いらっしゃいませ」  大東が自動ドアの方を見ると、ライトブルーのボタンダウンのシャツを身にまとったずぶ濡れの男が鬼の形相で駆け込んできた。男は左手に他のコンビニの買い物袋を持ったまま右手でカゴを勢いよく取ると、おにぎりのコーナーへ走っていき、片っ端からおにぎりをカゴに入れていった。男はすべての陳列棚にならんだおにぎりのおよそ半分をカゴに入れると、レジへと急いでカゴを持ってきた。  合計40個。会計金額は5000円を超えた。 「ありがとうございました。またお越しくださいませ」  大東が笑顔で丁寧にあいさつをすると、ずぶ濡れ男は両手に買い物袋を引っ提げて外へと走っていった。 「なんなんでしょうかね?あの人」  牧人はあっけにとられている。その様子を見て大東は笑っている。 「なるほどな。大変だな、あの人」 「なるほどな、って。知ってるんですか?あの人のこと」 「あの人のことは知らない。でも、大体の目的はわかったよ。確かほかの袋にもおにぎりやらお弁当やらが入っているんじゃないか?きっとこういうときだからこそバタバタ回らないといけないんだよ。彼らは」  大東はそう言うと、事務スペースに戻っていった。
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