ずぶ濡れ男、登場

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ずぶ濡れ男、登場

外は激しい雨が1時間前から降り続いている。 「なかなか止まないわね」 「はい」  あまねは袋菓子の品出しをしながら後輩の浩太に憂鬱そうに話しかけた。 「天気予報では晴れって言っていたのに。どうしてこうなっちゃったのかしら」 「最近の天気予報はあてにならないですからね」  天気予報を信じて洗濯物を干してきたのに。そうつぶやき、あまねはため息をついた。  自動ドアが開き、来客を知らせるチャイムが鳴った。 「いらっしゃいま…せ…」 あまりにいかつい形相を見てあまねは凍りついた。ライトブルーのボタンダウンのシャツを身にまとったずぶ濡れの男が鬼の形相で駆け込んできたのである。男はカゴを勢いよく手に取るとおにぎりのコーナーへ走っていき、片っ端からおにぎりをカゴに入れていった。男はすべてのおにぎりをカゴに入れると、一瞬動きを止め、カゴの中のおにぎりを陳列棚に戻し始めた。  男は半分ぐらいのおにぎりを陳列棚に戻すと、レジに勢いよくカゴを置いた。あまりの焦り具合にあまねは目を丸くしたが、気を取り直してレジを打ち始めた。 合計41個のおにぎり。会計金額は5000円を超えた。あまねはこんなに多くのおにぎりが買い物かごに入っているのを初めて見た。 「ありがとうございました」 あまねがそう言い袋を男に渡すと、男はダッシュで店の外へと出て行った。あまねはその男の後ろ姿を怪訝そうに見送った。 「どうしたのかしら?あの人」 「さぁ…」  浩太は首をかしげてそう言った。
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