第4章 滑らかなくちどけ

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あの日の光景が鮮明に思い出される。 可愛い顔をした男の子は偉そうな態度で私に話しかけた。 『おい、ブス。俺が一番前に並ぶんだから、そこどけよ』 ショックだった。 「ああぁ」と平蔵が突然、変な声を上げた。 「あの時のことか」 その光景は、なぜか自分の姿が目の前にあって、 5歳の私は顔を真っ赤にして泣き出した。 【ううっ】という、子供の頃の平蔵の声が頭の中に響いた。 そして、視界が動いて私の姿がフェードアウトした。 次の場面は、学級写真を見ているところだ。 私の姿を見ているのは明らかだった。 私の顔のすぐ近くに爪が汚れている子供の右手が見えた。 その手がアルバムを閉じたとき、 アルバムの表紙が青いストライプで、 赤ちゃんパンダの絵が描かれているのを見た。
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