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この距離だと息がかかってくる。
あいつの吐く息を吸うなんて、そんなのすごく嫌なはずなのに。
逃げ出すこともできるのに、なぜか私はグイと顔を上げて睨み返した。
怪訝そうに眉をひそめ、平蔵は奥歯にものが挟まったような活舌の悪さで言った。
「俺、お前に何かしたのか?」
「はぁぁあ??」
「は?じゃねぇよ。
ずっと気になってたんだよ。お前のその態度…」
私はつい窓の外に視線を投げた。
真正面から物言いされるだなんて、なんて日だ!と、心の中で悪態をついている。
平蔵は近くから見ると危険なほどイケメンだ。
ムカつくほどにモテる男なのだ。
そんな奴に見つめられて舌を噛んでしまわない保証はない。
それに、自分でもなぜこんな風なのかわからない!
だから、こいつは私になんていうことを聞いてくるのだ!
(ばかたれ!!)
「……バカたれってなんだよ」
私は凍り付いた。
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