午前二時に光る瞳

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 今日は残業もなく定時で帰れる。 「保、お疲れさん」 「お疲れ様です」  物流倉庫での夜勤を終えて車に乗り込み、エンジンをかける。ひとつ大きく息を吐き、徐にラジオをつける。ベイエフエムのいつもの女性DJの声に頬を緩ます。さてと、帰ろう。  いつもと同じ真夜中の道。  夜勤か。正直、昼間の時間に働きたい。というか最初はそうだった。なのに、夜勤に回されてしまった。文句を言ってもしかたがない。夜勤は断りたかった。けど声に出た言葉は『頑張ります』だった。  そんなこと思い出すな。  ラジオからは聴いたことのない曲がかかっていた。  あれ、ここはどこだ。  赤信号で止まり、街並みを眺めて小首を傾げた。おかしいな、いつもの道を走っていたはずなのに。街灯もない暗い街並みが目の前にある。どう見ても記憶にない道だ。青信号になったもののまっすぐに進んでいいのかわからない。  俺は少しだけ車を走らせて側道へと車を止めた。こういうときは、カーナビだと思ったのだがなぜか画面が歪みなんの反応もしない。 「どなっているんだ」  独り言を呟き、背凭れに身体を預ける。 「うっ」  突然、こめかみに鈍痛が走った。軽くかぶりを振り、眉間に皺を寄せて何気なく時計を見遣る。午前二時を少し回ったところだ。早く帰らなきゃ。そう思い、ハンドルに手をかけたとき、唸り声のような風が吹く。助手席側のほうからガサガサと草が揺れて、ビクッと身体を震わせる。  嫌だな、この感じ。  助手席側の窓から揺れる草が窺える。
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