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「……え!?」
私は、ナイフとフォークを持ったまま固まった。
「もうすぐしたらシーズンオフで今よりは仕事が落ち着く。そしたら美味しいお店に連れて行ってあげる」
私は変わらず固まったまま目をぱちくりさせた。
え…。き、聞き間違えたかな…。
私を、食事に連れて行くって聞こえたような…!?
二神さんは私から視線を外すと、慣れた手付きでお肉の左側をフォークで刺し、ナイフで切って口に運んだ。
食事姿もスマートで上品綺麗、場所が場所だけに今正装していればきっと皇子様に見える。
そんな麗しい二神さんの婚約者役というだけで現実離れしているのに、実際に食事しに行くなんて…、
どんな王宮に連れて行かれることか…!
一般庶民の私には不釣り合いすぎる。私の存在なんてきっと霞んで消えてしまう!
「俺たちはいつもおもてなしをする方だろ。こうやってたまには逆の立場になって、お客として楽しむことも大事だと思うんだ」
テーブル席には私たちしか居ない。
それもあって、さっきから二神さんは仕事の話全開だ。
勝手に妄想を膨らませて異次元世界に飛びかけていた私は、無理やり意識を引き戻した。
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