行き交う車

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行き交う車

 一歳半の息子は車がとても大好きだ。  乗り物図鑑もTVの映像も好きだが、やはり実物が何より好きなようで、最近散歩のコースに『歩道橋に上る』という項目を追加した。  高い所から道路を見下ろし、行き交う車を見せてやると、きゃっきゃっと笑い、とても喜ぶ。  親としてはそれが心底嬉しくて、軽く三十分以上に及ぶ息子の車観察も苦にはならなかった。 「ぶーぶー、青ー」 「赤ー」 「白のぶーぶー」  さすがに車種は判らないが、目についた色の車を指差して拙く話す。  それをいつもにこにこと聞いていたが、ここ最近、息子の発言に首を傾げることが多くなった。 「白のぶーぶー。タイヤ赤ー。にゃんこいるー」 「わんこのぶーぶー。黄色ー。タイヤ赤ー」  何故か時折、車の色を言う際に動物の名前を出すようになった。しかも必ずタイヤを赤と指定する。  犬だの猫だの、何のことだ?  しかもタイヤが赤色とは…。  日を追うごとに考えが膨らみ、最近は、息子の発言の内容が何を示しているのか、判る気がしてきていた。  そんな折も折。 「黒のぶーぶー。黒の上からいっぱい赤ー。タイヤ赤ー。女の人も赤ー」  息子よ。お前、何が見えている?  その答えも怖いが、何よりも、父は、お前が黒の上からいっぱい赤だと言ったあの車のナンバーを覚え、警察に通報しておくべきか? 行き交う車…完
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