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「ちょっ!待って・・っ!」
グイグイと腕を引っ張られて連れてこられた先は、人気の無い屋上の階段下。
「こんなとこに連れてきて何・・・?」
「お前、今携わってんだって?」
「え?」
「曲作り。」
あぁ・・・
それで怒ってるんだ。
っていうか、伊吹くん伊織ちゃんの件はなんとかするって言ったじゃない!!
「携わってるって言うか・・・・」
別に私が作る訳じゃないし、単なるアドバイス程度の話だからと私は言葉を濁した。
「他人に関与されたくないんだよ。伊吹が何言ったんだか知らないけど、そんなとこまで介入してくんな。」
相変わらずの言い草に、私も言い返す。
「私だって好きで関わってる訳じゃないよ!伊吹くんがどうしてもって言うから・・・それに、そもそも女の子の恋心なんて伊織ちゃんに書ける訳?」
私の言葉に伊織ちゃんはキッと視線をぶつけた。
そしてそのまま壁に私を追い詰めると、私の顔の横で思い切り右手を壁に突いた。
!!!
少女マンガでよく見かける多くの女子が憧れるこのシチュエーションは、残念ながら今の私にとってはただの威嚇でしかない。
そして相手はどう見ても女の子にしかみえないっていうんだから、ときめきもへったくれもない。
「じゃあ、お前には分かる訳?男の俺にいい女になる手筈を聞いちゃうようなお前が。」
ふっと鼻で笑いながらそう言う伊織ちゃんに、私は思わず言葉を飲み込んだ。
「うっ・・・それは・・・っ」
「分かったらもう必要以上に首突っ込むなよ。」
そう言い放つと、さっと私から離れていった。
「~~っ!!むかつくー!!!」
あんな悪魔に、恋する乙女心なんて解られてたまるもんですかっ!!
伊織ちゃんこそ出来なくて泣き事言うに決まってる!
抑え切れない感情をぶつける先もない私は、心の中で悪魔に文句を言うとため息を吐いて再び教室に戻った。
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