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どうやら侵入者は川の水を飲むようだ。
ここの辺りの山の水は長がしっかり山を統治しているせいか澄んでおり癖のない美味しい味がする。
侵入者はどうやら異国語を話しているようで水を飲んでは何かを言っているが、聞き取ることは出来なかった。
「しかし何だこの匂いは…」
最初は“嗅いだことのない種族の匂い”という印象しかなかったのだが今ではなんとも言い難い馨しい香りに変わっている…
美味そうな匂い
としか言いようのない匂いだ。
持って帰りたい。
素直にそう思ってしまうことに驚きはしたが何やらニコニコしながら考え事をしている様子を見ていると一掃その衝動に駆られてしまうのも事実だった。
様子を見るだけのつもりだったが我慢ならん。
持ち帰ろう。
長は様子を見てこいとしか言わなかった。
と、いうことはその後はどうしても良いということだ。
いや、そういう事にしておこう。
一刻も早くあの侵入者を寝室に閉じ込め組み敷き……保護。保護をしよう。
侵入者が移動を始める前に連れて帰ろうと後ろから近づいたのだが、時すでに遅し、到着するや否や侵入者が回れ右をして突進してきた。
何故か既に匂いは消えており最初に嗅いだ異種族の匂いしかしなかったことに不思議を感じたがそれよりも何やら震えているようで胸元でカタカタと小刻みに動いている様子にむず痒くなった。
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