お城とイケメン

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「どうせあなたの事ですから彼のことでも考えていたんでしょう。」 よいしょ、と小さく呟いて私の机の隣に椅子を置いて腰掛けた。 「うむ。いくつくらいなのかと思ってな。」 「…そこですか、気にするところ。」 確かにアキラは他にも気にするところは沢山ある。 この国では無い異国の言葉。 耳と尾が無く見たことのない服装。 そして何よりあの匂いだ。 「あるにはあるが言葉がわからなければ聞くことも出来ぬし教えることも出来ない。もう少しアキラが落ち着くまで様子を見よう。」 夕食の時にはだいぶ落ち着いた様だがまだ初めての土地に警戒しているはずだ。 言葉を教えるという口実に少しこちらの生活になれて肩の力を抜いてもらいたい。 それからはアキラの習う言葉についてどこまでを目標に習わさるか、この国については伝えるべきかなど軽く話し、気がつくと月がだいぶ登っていた。 「あの子の親はどこにいるんでしょうか…」 ポツリ…と不意にアーキルが呟いた。 途中から相槌しかしないでカリカリペンを動かしているとは思ったがどうやら話を聞いてなかった訳では無いらしい。 「…少なくともあの場には一人でいたな。」 あの背格好からして10歳ほど。 となるとまだ狩りも親と一緒に行うのが一般的だ。そして他国だとしてもあの山は我が国の下方にありその奥は港になっている。到底ひとりで来れる距離ではないのだ。 その事も言葉が通じるようになってから確認することになった。 まだ匂いのことは言えないがいずれはアーキルにも話さねばならぬ時が来るだろう。 それまでにアキラが無害だとわかれば良いが果たして私の理性は持つのかど 「…ディウブ、あまり余計なことは考えるなよ。」 随分と考え込んでいたようだ。 その間にアーキルは帰る支度を終えていたようで扉の前に立っていた。 「では、私はそろそろ。月が傾き始めていますので殿下もそろそろ休まれた方がよろしいかと。」 そしてそう言い残し部屋を出ていった。
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