第一章 嫌い

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それから、あたしは山田くんにたくさんアピールをした。 友香がよく、辛そうに山田くんを見つめていたのは知っている。 親友のあたしが山田くんを好きだって言うんだから、友香は応援せざるを得ないんだろう。 あたしが意図してやっているとも知らずに。 ごめん、なんて言葉は出ない。 だってあたしは、ずっと前から山田くんのことが好きなんだから。 ……友香より、ずっと前から。 山田くんとは入学してから二年間同じクラス。 入学してすぐ、山田くんはクラスの人気者になった。 あたしはあんまり興味なくて、山田くんにキャーキャーする女子達を煙たがっていた。 そんなとき、一年生のときの席替えで山田くんと隣になった。 ある日、いつも通り国語の授業を受けていたときのこと。 山田くんは隣の席で、頬杖をついて眠っていた。 「じゃあここ、山田」 国語教師が文章を読めと山田くんを指した。 だけど山田くんは起きなくて、仕方なしにあたしが起こした。 「山田くん、当たってる」 「…!?あー…えっと」 「六十四ページ」 あたしがページを教えると、山田くんは急いで教科書を開く。 そんな山田くんがなんだか滑稽で、面白かった。 授業が終わると、山田くんはあたしに礼だと言ってココアをくれた。 「なんでココア?」と聞くと、「だっていつも飲んでるじゃん?」と返されたとき、あたしはやっと気づいた。 みんなが山田くんを好きになる理由を。 あれから私は、山田くんのことが好き。 二年生になって、中学から一緒の親友である友香と同じクラスになり、同時に山田くんとも同じクラスになった友香が山田くんを意識し始めたことも、少し前から知っていた。 友香のことは好きだけど、あたしは友情より恋を選ぶ。 友香に山田くんは譲らない。 好きだから。
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