第一章 嫌い

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夏がやってきて、花火の季節になった。 あたしは花火大会に行こうと友香を誘い、そして山田くんとその友人を誘った。 友香は山田くんが来るということを知ると、少し不安そうだった。 そんなことはお構い無しに、 「あのさ」 あたしは友香に話を切り出す。 「実は、花火大会の日に告白しようと思ってるんだ」 「……え?」 不安そうだった友香の表情は、すぐに驚いた顔になる。 「ほら、結構アピールしたし、そろそろいいかな~って!それにさ、山田くんも満更でも無さそうだし…?」 「……そうなんだ。……頑張ってね。応援してる…」 友香は俯いて、少し泣きそうだった。 あたしはニヤリと笑う。 『悪女』 あたしにはそんな言葉がお似合いだ。 夏休みに入り、花火大会当日がやって来た。 入念にオシャレをして、浴衣を着て、今日のあたしはいつもより可愛いと思う。 待ち合わせ場所に行くと、山田くんが先に来ていた。 その隣には、浴衣の友香がいた。 楽しそうに話す二人を見て、イラついた。 「お待たせ~!」 友香は、テンション高くやって来たあたしを見つけると、すぐさま山田くんから距離をとった。 「おっ、浴衣似合ってるじゃん」 あたしは山田くんの隣に並び、 「ありがと!」 と言う。 少し離れた友香は、また寂しげだ。 可哀想な友香。 それから他の友人たちも来て、花火を楽しんでいた。 山田くんの隣は常にあたしがキープして、友香を寄せ付けないようにしていた。 そして、みんなが花火に夢中になっている間に、あたしは山田くんに「話がある」と言って、二人だけで抜け出した。 もちろん友香は気づいていたようだったけど、見せつけるつもりだったから計算通り。 あたしの告白は、成功して終わる。 そう確信していた。
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