四十九日の晩に

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冗談口調の小言を言われたりしながら、母が “そう言えば、朝の四時過ぎくらいに誰か外に出て行ったみたいだけど、あれ誰だったの?” と気になっていた足音について問いかけると、 “え? そんな時間に誰も外になんて出てないわよ。わたし、起きてたからそんな人いれば気づいたはずだし” そう真面目な顔で言葉を返された。 “ それじゃあ、あの玄関から出て行く足音は何だったの?” そう疑問に思った瞬間。母は気がついた。 玄関から誰かが出て行く音を聞いたのは、娘が泣き止んだ直後。 “……お義父さんだ。孫が家に来たから、嬉しくて一晩中ずっと側でかまってたんだわ” それで娘はずっと泣いてたわけか。 もしそうであれば、なんともはた迷惑な。 その後、母は義父の遺影の前で手を合わせ、ああいうことは二度とやめてくださいとお願いをしたという。 姉が一晩中夜泣きをすることは、その後一度もなかったらしい。
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