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「私ねえ、実はすっごく霊感がある『みたい』なんです!」
居酒屋の座敷の一画で、頼子は酔っ払い特有の場違いな声でそう叫んだ。
仕事上がりの同僚との飲み会だ。宴もたけなわとはいえ突然の頼子の宣言に、周囲は一瞬しんと静まり、そして一斉に笑い出した。
「あ、信じてないでしょ! 昔、そう言われたんです。占い師っぽいおばさんに!」
「じゃあお化け見えるの?」
「それがですねえ……」
そこで急に頼子は声を潜めた。再び周囲は静まり返る。
「……実際は見えてるんですよ。でも、霊感が強すぎて、私の目には幽霊も生きてる人間と同じように見えてるって……!」
雰囲気に飲まれ、ごくりと唾を飲み込む者が数人。
「……だから?」
「だから、分っかんないんですよ! 私にも!」
頼子のこの日一番のかん高い声に、周囲は再び笑い声を弾けさせた。
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